ココロの皮むき

産業カウンセラーが学んできたことを書くブログ

アドラー心理学では「怒りは相手を支配するために創り出されるもの」と考える

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あなたの怒りは相手を支配するために創り出したものかもしれない!?
 
こんにちは。どいつよしです。
 
 
前回の記事では、怒りの感情が湧き起こるのは相手に対する期待があり、その期待が裏切られたことによることが多いということを書きました。
 

 

 
 
その記事を書いた後、アドラー心理学でも怒りについて取り上げられていたことを思い出しました。
 
 
『小倉広 著 アルフレッド・アドラー人生に革命が起きる100の言葉』には、こう書かれています。
 
 
あなたはカッときて自分を見失い怒鳴った、のではない。相手を「支配」するために「怒り」という感情を作り出して利用したのだ。
 
 
『岸見一郎 著 嫌われる勇気』には、こう書かれています。
 
 
あなたは「怒りに駆られて、大声を出した」のではない。ひとえに「大声を出すために、怒った」わけです。つまり、大声を出すという目的をかなえるために、怒りの感情をつくりあげたのです。<中略> すなわち、大声を出すことによって、ミスを犯したウェイターを屈服させ、自分のいうことをきかせたかった。その手段として、怒りという感情を捏造したのです。
 
 
アドラー心理学では、怒りも含めた感情は決して自動的にわいてくるものではなく、目的を達成する為の手段として創り出されるものと考えます。
 
 
これを、【使用の心理学】と言います。
 
 
とりわけ、怒りについては、相手を支配するという目的を達成するために創り出されることが多いそうです。
 
 
前回からの続きで、期待を裏切られることで怒りが湧き起こることと繋いでみると、
 
 
期待を裏切られた→怒りの感情を使って相手を攻撃する→相手は期待された通りにせざるを得なくなる
 
 
という流れになり、
 
 
怒りによって自分の期待通りに動いてもらう目的が達成される、ということがわかります。
 
 
自分の期待通りに動いてもらうということは、相手のことはお構いなしですので、一時的に相手を支配することと言えます。
 
 
この流れが日常的に頻繁に繰り返されることで、相手の人生さえも支配することが可能になります。
 
 
DVや虐待、パワハラ、悪質なクレーマーなどを思い浮かべていただくとわかりやすいかと思います。
 
 

アンガーマネジメントにも一役買う!?

アンガーマネジメントは、「怒らないことを目的とするのではなく、怒る必要のあることは上手に怒れ、怒る必要のないことは怒らないようになる」ことを目指します。
 
 
アドラーの【使用の心理学】の考えから怒りをとらえてみることは、それの実現に一役買ってくれると思います。
 
 
『人生の迷いが消えるアドラー心理学のススメ』の著者、向後千春さんは「感情は自分の目的のために使っている道具」だと言っています。道具は適切に使えば私たちを豊かにしますが、間違った使い方をすると傷つけるものになりますよね。
 
 
「道具としての怒りを適切に使えるようになる」ということと、「怒る必要のあることは上手に怒れ、怒る必要のないことは怒らないようになる」ということは結ぶことができると僕は考えます。
 
 
【使用の心理学】という考え方から怒りをみていくと、「私のこの怒りっぽい性格は、なにかを成し遂げようとして私が使っているものだ」とか「部下が失敗すると厳しく叱責してしまうのは、どういう目的を達成したいからなのだろうか」と振り返ることができます。
 
 
振り返って目的が明らかになったら、「その目的を達成するために他にどんなことができるだろうか?」などと改善策を考えることができるようになります。
 
 
もし、その改善策が見つかり実行に移せたなら、「怒る必要のないことは怒らないようになる」ことの実現に繋がっていくのではないでしょうか。
 
 
一方で、相手から怒りを顕にされた時にも、【使用の心理学】の考え方は役に立ちます。
 
 
「ああ、この人は、私を支配しようとしているな。」とか「この人は、なにかを達成するために怒りをこちらに向けてきているな。」と少し間を置いて対応することができるようになります。
 
 
怒りをぶつけられることは辛いですが、ダメージを最小限に食い止めることができると思います。クレーム処理のプロフェッショナルには、この考え方を役立てている人も多いとか。
 
 

感想

今回は、アドラー心理学の「怒りは相手を支配するために創り出されるもの」という考え方をもとに、これまで書いてきた怒りについての記事との関連性を見つけながら書いてきました。
 
 
「私たちは怒りの感情を目的を達成するための道具として創り出している」ということから僕自身のことを振り返ってみると、たしかにあてはまることがあり、「何の目的のために自分は怒りの感情を発動したのだろう」と考えると、その時の本当の自分の気持ちに気づくことができました。
 
 
ただ、その時は結果として、怒りの感情を顕にしても僕の本当の気持ちをわかってもらうことはできませんでしたし、相手が自分の思い通りになることもありませんでした。
 
 
怒りの感情を使ったとしても、本当の気持ちが伝わるわけではない。自分の思い通りに相手が動いてくれるわけでもない。ということを改めて認識するよい機会にもなりました。
 
 
対人関係の中で怒りを感じた時に、そのまま怒りを顕にするのではなく、「何の目的のために自分は怒りの感情を発動したのだろう、本当にわかってほしい気持ちがあるのではないだろうか」と考えることは、アンガーマネジメントになるだけでなく、自分の本当の気持ちを大事にすることにもなると思いました。
 
 
ちなみに、僕が読者になっている、はてなブロガーの志田恵さんも、最近の記事で怒りについて書かれていましたが、このマンガに出てくる志田さんの行動を【使用の心理学】の視点でみてみるとすごく納得がいきました。
 
 
志田さんのブログはこちらです。まず普通に読んでみて、それから、【使用の心理学】の視点でもう一度読んでみて下さい。とても理解が深まりますよ!