ココロの皮むき

産業カウンセラーが学んできたことを書くブログ

フォーカシングで変化が起きる瞬間フェルトシフトについて学んだこと

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こんにちは。どいつよしです。
 
 
ここのところフォーカシングについての記事が滞っていたので、久しぶりに書きたいと思います。
 
 
前回は、フェルトセンスのことを書きました。
 
 
今回は、フォーカシングで変化が起きる瞬間を意味する用語、フェルトシフトについて書きたいと思います。
 
 
ちなみにフェルトシフトは、聖闘士星矢に出てくる獅子座のアイオリアの必殺技とは大きく違いますのでご注意を。
 
 
君はフェルトセンスを感じるか!?
 
 
くらえ! フェルトシフトォォォ!!
 
 
 
意外と合うかも。笑
 
 
 
 
・・・では、さっそくいってみましょう〜!
 
 

フェルトセンスあってのフェルトシフト

フェルトシフトを理解するには、フォーカシングとフェルトセンスのことを復習しておかないといけませんので、少しおさらいをします。
 
 
フォーカシングとは、
 
 
哲学者でもあり心理学者でもある、ユージン・ジェンドリンが提唱した心理学の理論と実践の名称で、
 
 
「自分の内側にある言葉やイメージにならない[感じ]に注意を向けていき、
 
その[感じ]に触れながら、それを言葉やイメージなどで表現して
 
[感じ]に秘められた意味を明らかにしようとするプロセス」
 
を誰でもできるようにする方法。
 
 
でしたよね。
 
 
そして、自分の内側にある言葉やイメージにならない[感じ]をフェルトセンスといいます。
 
 
他の言い方をすると、フェルトセンスとは、
 
 
「はっきりとした感情ではないが、なんとなく<からだ>に感じられていて、そこには意味が含まれているもの」
 
 
のことです。
 
 
フォーカシングとフェルトセンスについてはこちらにも詳しく書いています。合わせて読んでみてください。
 
 

フェルトシフトとは?

さて、ここからが本題です。
 
 
<からだ>に感じられるフェルトセンスに注意を向けていき、それに触れながら、それを言葉やイメージなどで表現しようと探っていく中で、
 
 
「ぴったりした表現が見つかって、緊張の解消やホッとするなどの感覚的な変化が感じられ、問題や課題に対する新たな気づきも生まれる」ということが起こります
 
 
この現象のことを、
 
 
フェルトシフト
 
 
といいます。
 
 
フェルトシフトには、「あ!わかった」というひらめきや、何かに気づくというアハ体験をともないます。
 
 
フェルトシフトが起こると、問題はまだ解決しないままそこにあるかもしれませんが、今までとは違うまったく新しい視点が開けます。それにより、問題への関わり方も変化します。
 
 
また、笑いなどの解放が起こり、<からだ>の実感が変化し、フェルトセンスは変わるか消失するという特徴的な変化が起こります。
 
 
フェルトシフトが起こることを「生を前進させるエネルギーが見つかる」と言う研究者もいます。
 
 
ちなみに、生理学的にみた場合でも、フェルトシフトが起こって気づきを得ると、その内容はどんなことであれ、リラックス効果が得られるのだそうです。
 
 

日常でもフェルトシフトは起きている!?

フォーカシングになくてはならないフェルトセンスってどんなもの?』でも書いたように、私たちはうっすらとしたフェルトセンスを常に感じています。
 
 
うっすらとフェルトセンスを感じているということは、フェルトシフトも起きていると考えられます。
 
 
池見先生がよく使われるランチタイムの例えをお借りして説明します。
 
 
ランチタイムに「空腹ではあるけれど、油っこいものは食べたくない」といった複雑なフェルトセンスをうっすら感じていたとして、
 
 
お店のメニューや食事の見本を見ながら、
 
 
「ハンバーグ・・・ちょっと違う・・・お好み焼き・・・うん、粉モノはちょっと・・・ラーメン・・・いや、重たい・・・パスタ・・・うん、近いけど、ちょっと違う・・・そば! あ、これだ!」
 
 
という流れです。
 
 
目に入るレストランのメニューや食事の見本といった象徴と、フェルトセンスが相互に作用し、「そば」というぴったりのものが見つかってフェルトシフトが起きるということです。
 
 
「そば」に行き着くまでの<からだ>の実感と、「そば」というぴったりくるものが見つかってからの<からだ>の実感は違うものになっているはずです。
 
 
また、あえてランチタイムの空腹感をこの人にとっての【問題】とすると、
 
 
「何を食べようか」と迷っている状態での空腹感と、そばを食べることにしようと決めた状態での空腹感は、
 
 
空腹感という【問題】はまだ解決されてはいないものの、それへの関わり方は大きく違ってきていると想像できます。
 
 

フェルトシフトへは見出しをつけて響鳴させる過程を経る

フェルトシフトが起きるには、
 
 
<からだ>で感じられるフェルトセンスに触れながら言葉やイメージを探り、ぴったりした表現が見つかる
 
 
という過程が欠かせません。
 
 
フェルトセンスを言い表す、適切な言葉やイメージを思い浮かべることを「見出しをつける」と言います。
 
 
見出しが決まったら、その言葉やイメージを数回、自分の中で響かせてみます。どうもぴったりくる感じがしなければ、見出しを変更します。これを「見出しの響鳴」と言います。
 
 
見出しの響鳴をおこなっていく中で、フェルトセンスがより強く感じられたり、「ぴったりだ」という実感が得られる時がきます。
 
 
そして、その瞬間に、「あ!わかった」というひらめきや、何かに気づくアハ体験があると、フェルトシフトが起こったことになります。
 
 
産業カウンセラー養成講座では、「感情への応答」を重視しますが、それは、フォーカシングでいう「見出しの響鳴」をやっていることだといえます。
 
 
クライエントが感じていることについてカウンセラーに表現し(見出しをつける)、カウンセラーがそれを言い返すこと(感情への応答)によって、クライエントの中で「見出しの響鳴」の作業が行われていきます。
 
 
そして、「見出しの響鳴」を通してフェルトシフトが起こることを非指示的に促していくことになるのだと思います。
 
 

フェルトシフトを促す問いかけ

「見出しの響鳴」→「フェルトシフト」の過程をさらに促進するために、開かれた質問を使うこともあります。
 
 
「このことの何が<見出し>みたいだろう?」
 
「この<見出し>という感じは何からきているのだろう?」
 
「これ<見出し>は私にとって、いったい何についてのことだろう?」
 
 
何が悪いのかを指し示すための質問
「これ<見出し>ついて、本当のところ私はどう感じているのだろう?」
 
「何のことで、これほど<見出し>と感じているのだろう。
 
 
どうなったら正しいかを指し示す質問
「この<見出し>の感じは何を必要としているだろう?」
 
「この<見出し>の感じが私に何か教えてくれているとしたら、それは何だろう?」
 
「この<見出し>の感じは何があればほっと一息つけるだろう?」
 
 
などがあります。
 
 
フォーカシングのセッションを受けると、問いかけを行った時に、「アタマで考えないように。」と言われます。
 
 
アタマの理解で答えを言うのではなく、フェルトセンスから何か新しいことが浮かんでくるのを待つようにすることが大事だからです。
 
 
また、問いかけに対する「答え」が出てきたにもかかわらず、フェルトシフトが起こらない場合は、他の質問に変えてみるか、見出しをつけなおしてみることが良いそうです。
 
 

フェルトシフトでの気づきを味わう

フェルトシフトでの気づきは、安心感や解放感を得られるようなものが多いですが、時としてアタマの理解と大きく違っていることがあります。
 
 
そういう時は、驚きとともに、受け容れることへの抵抗が生じることもあるようです。
 
 
ただ、その気づきは<からだ>の実感として、逆らえない確実さをもったもの。
 
 
良いか悪いかという評価をせずに、いったん受け容れて、<からだ>に感じられている「気づき」をじっくり味わっていくことがよいそうです。
 
 
じっくり味わっていくことで、その次のフェルトシフトに向けての前向きな動きが出てくることと思います。
 
 

学びは続くよどこまでも・・・

以上、フェルトシフトについて僕が学んだことをまとめました。
 
 
フェルトシフトが起きるためには、「フェルトセンスに注意を向ける」→「見出しをつける」→「見出しの響鳴」という過程が欠かせないことがわかりました。
 
 
実は、この過程が行われるには、フェルトセンスと有効的な関係性や、適切な「間」がとられていることが必要とのこと。
 
 
次回、フォーカシングがテーマの記事を書く時は、そのあたりを書いていきたいと思います。
  
 

引用・参考文献 

心のメッセ-ジを聴く (講談社現代新書)

心のメッセ-ジを聴く (講談社現代新書)

 
僕のフォーカシング=カウンセリング:ひとときの生を言い表す

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解決指向フォーカシング療法―深いセラピーを短く・短いセラピーを深く

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