乳児期のスキンシップが心の発達に大きく影響することについて
こんにちは。どいつよしです。
僕は乳児院で働いていたことがあります。乳児院は0歳〜3歳くらいまでの子どもを預かる施設です。そして、そこで働いていた時は、明けても暮れてもスキンシップを積極的にとるようにしていました。
破壊なくして創造なし!by橋本真也
ならぬ、
スキンシップなくして愛着なし!
というくらいに大事にしていました。
乳児院でスキンシップを積極的にとるようにしていたことは、専門家によって、その必要性がちゃんと裏付けされています。
乳児期(0歳〜3歳)の発達において、保護者が赤ちゃんに最適な環境をあたえ、いっしょに関わって、対話して、情緒や社会性を養いながら、発達を促してあげることが、重要である。 byアメリカの両親教育センター所長のホワイト博士(Burton.L.White)
そして、乳幼児へのスキンシップは乳児院に限ったことではなく、一般家庭の子育てにおいてもとても大事であることがわかっています。
今回は、乳児期のスキンシップが心の発達に大きく影響してくることついて書いていきます。
乳児期は心の土台をしっかり築く大切な時期
心理カウンセラーの常冨泰弘さんによると、
子どもの脳は3歳くらいまでに大人とほぼ同じくらいの大きさになり、その間に、視覚、聴覚、嗅覚など、五感をフル稼働させて外界からの情報を、判断の基準として取りこんでいくとのこと。
親とのかかわりや遊び、食事などを通してこの時期に吸収した情報は、それ以降の人生においての「基本情報」となり、“心の土台”の強度に直結するのだそうです。
心の土台とは、幼少期のセルフイメージのこと。「自分は美しい」「自分は強い」「自分はなんでもできる」など、「自分は〇〇だ」というイメージで、その後の人生に大きな影響を与えます。
セルフイメージを鮮明にするのは5、6歳くらいになりますが、そこに至るまでの、「私には生きる価値がある」「私は愛されている」という層がしっかり築かれていることが、自信が持てるセルフイメージを描けることにつながっていきます。(下図参照)
※『常冨泰弘著 / 自分に自信をつける最高の方法』より引用
「私は愛されている」層までが強くしっかりしたものになるかどうかは3歳までに決まります。
赤ちゃんは不安になると泣きます。そこに自分を愛してくれる人(母親やそれに代わる人)がやって来て、「よしよし、もう大丈夫だよ〜」と抱っこしてもらえます。
抱っこなどのスキンシップをされることにより、オキシトシンという愛情ホルモンが体内に分泌され、愛情を感じ、安心します。
乳児期のあいだにたくさんスキンシップをしてもらった子は、「私は愛されている」と強く確信して育ちます。
また、母親をはじめとする保護者が安全基地として確立されるので、成長していくに従って、保護者から少し離れたところまで冒険に出て行くことができるようになります。
冒険に行った先で恐怖や不安を感じると、保護者のもとに戻ってきて抱きつき、慰めてもらいます。
そして、保護者の温もりに包まれながら気持ちを安定させて、元気と勇気がもどってきたらまた冒険に出ていきます。
保護者の腕の中と外の世界を行ったり来たりしていくプロセスが、大きくなって社会に出て自分らしく生きていく自信につながっていきます。
逆に、3歳くらいになるまでに十分なスキンシップを与えてもらえないと、「私には生きる価値がある」「私は愛されている」という層がしっかり築かれないので、安心感、信頼感を感じにくいまま大人になってしまうことがあります。
乳児期のスキンシップの重要性を裏付ける研究
3歳くらいになるまでに十分なスキンシップを与えてもらえないと、安心感、信頼感を感じにくいまま大人になってしまうことを裏付ける、身体心理学者の山口創さんの研究結果があります。
【初対面の同性から方を軽くたたかれたり、背中に触られたりしたときにどう感じるか?】という質問を大学生対象に行ったところ、
子どものころにスキンシップが多かった学生は、「励まされた感じがした」「気持ちが落ち着いた」など肯定的な評価が多く、
子どものころにスキンシップが少なかった学生は、「ちょっと緊張した」「不快な感じがした」など否定的な評価が多く、
乳児期にスキンシップが少なかった大学生は、人間不信や自閉的傾向が多く、自尊感情も低いという結果になったのです。
また、高校生と保護者を対象に、【衝動的に攻撃しやすい傾向と乳児期のスキンシップの関係性】を調査したところ、
乳幼児期にスキンシップの足りなかった子どもは、高校生になってからカッとなって衝動的に他者を攻撃する傾向が高い、すなわち「キレやすい」傾向にあることがわかったそうです。
また、キレやすい子どもを、「言葉で攻撃しやすい」と「いつもイライラし、暴力で攻撃しやすい」という2つの傾向でわけると、
「いつもイライラし、暴力で攻撃しやすい」の傾向が高く、思春期になってもしょっちゅうイラ立っているような情緒不安的な状態がつづいていることもわかったとのことです。
非行少年たちへの調査を行ってきたアメリカの心理学者ジェームズ・プレスコットは、子どものころのスキンシップ不足が問題行動につながっていることについて以下のように述べています。
身体への触れ合い不足は、抑うつや自閉的な行動、多動、暴力、攻撃、性的逸脱などの原因になる。幼少期に皮膚感覚への刺激が不足していると、成人後にも皮膚感覚への刺激に依存するようになる。
そして例として、体のあちこちにピアスをする、リストカットをする、などを挙げられています。
これらの研究・調査結果から乳児期にスキンシップをたくさんとって、心の土台の第2層「私は愛されている」までがしっかり築かれていることが、その後の心の発達にもとても大事なことであることがわかります。
乳児期のスキンシップ不足は取り戻せる!
では、親と早くに別れてしまった。親が病気がちで甘えられなかった。親が忙しくてひとりで過ごす時間が多かったなど、いろいろな事情があって、3歳ごろまでにスキンシップをたくさんとることができなかった場合は、もうどうすることもできないのでしょうか。
山口さんも常冨さんも、後からでもやり直すことができる!とおっしゃっています。
僕が働いていた乳児院でも、ネグレクト家庭で育った子どもが担当さんとのスキンシップを積み重ねた結果、攻撃性が激減したり、奇声を発することがなくなったり、不安感が解消したりということが、たくさんありました。
山口さん常冨さんによると、大人になってからでもスキンシップをとることを心がけるようにすれば、「私は愛されなかった」という心の土台の歪みからくる、孤独感や寂しさ、不安などを埋めることができるのだそうです。
大人になってからのスキンシップとしては、パートナーがいる場合は、パートナーと触れ合う機会を増やす。ハンドマッサージが手軽でおすすめ。
小さなお子さんのいる人は、抱っこやおんぶ、くすぐり遊び、粗大運動など、子どもさんのためにもたくさんスキンシップをする。
1人の場合はお金がかかりますが、アロママッサージ、エステサロン、ペットなど動物との触れ合いなどが効果的。ぬいぐるみをペット代わりにして撫でるだけでも効果は出るとのことです。
今回はざっと紹介しましたが、また別の機会に乳児期以外でのスキンシップのとり方について詳しく書けたらいいなと思います。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
今回は、乳児期のスキンシップのが心の発達に大きく影響してくることについて書きました。
乳児期のスキンシップが、「私は愛されている」という心の土台の基礎部分を強固にし、ポジティブなセルフイメージを持つことへつながること。乳児期のスキンシップ不足が、問題行動を起こすようになったり、人間不信や自閉的傾向のある大人になってしまうことがあること。大きくなってからでもスキンシップを取ることにより、乳児期のスキンシップ不足を取り戻すことができること。
がおわかりいただけたら嬉しいです。
また、「スキンシップの重要性はわかったけど、どのようにしてやっていけばいいのかわからない」という場合は、「ちょい撫で」からはじめてみるというのもおすすめです。
参考文献
幸せになる脳はだっこで育つ。-強いやさしい賢い子にするスキンシップの魔法-
- 作者: 山口創
- 出版社/メーカー: 廣済堂出版
- 発売日: 2013/11/23
- メディア: 単行本
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僕の乳児院時代のバイブルといえる本のひとつです。抱っこをはじめとするスキンシップの重要性をデータをもとに伝えてくれます。
また、忙しい時でもスキンシップがとれる方法や、スキンシップを嫌がる子どもへの対応法など、様々なスキンシップの取り方も書かれていてオススメです。
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これは、育児の本ではないのですが、乳幼児期の関わり方がその後の人生においてどれだけ影響を及ぼしてくるのかについてわかりやすく書かれています。
心の土台が築かれていくプロセス、土台構築に失敗した時の影響とそれを修復するための方法を知ることは、子育てしているすべての人に役に立つと思います。