乳幼児揺さぶられ症候群は科学的根拠がなかったとしても保護者には知っておいてほしい
こんにちは。どいつよしです。
諸事情があり、ブログの更新が途絶えてました。
前回は、赤ちゃんがなにをやっても泣きまくる、理解困難な泣きの時期「パープルクライエング期」について書きました。
その中で、パープルクライング期の激しい泣きは、乳幼児揺さぶられ症候群へと繋がる危険性があるということも書きました。
今年、『揺さぶり虐待疑われた祖母に逆転無罪! 他の乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)裁判にも大きな影響』のニュースが大きく報道され、少なからず「乳幼児揺さぶられ症候群」という言葉が世間に広く知れ渡ることになりました。
現在、日本においては、日本小児学会が乳幼児揺さぶられ症候群(以下、SBSと記載)への啓発活動をしていますが、一方で、外国人医師を中心にSBSを否定する動きもあります。
そんな困った状態になってるSBSなのですが、SBSを発症させると言われている接し方は、SBSに関係あろうがなかろうが、赤ちゃんにとっては危険であることには変わりないので、本当にあるのかないのかはっきりしない状況でも、知っておく必要があるのではと思います。
そこで、今回は、僕が小児科の先生から学んだSBSについての知識をシェアすることにしますね。
乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)とは?
周りから見たら「あんなことをしたら、子どもが危険だ」と誰もが思うくらいに激しく、乳幼児が揺さぶられた時に起こる重症の頭部損傷です。
頭が重たく、くびの筋肉が弱い赤ちゃんは、揺さぶられた時に自分の頭を支えることができません。
胸部を手で掴まれて前後に激しく揺さぶられることにより、赤ちゃんの頭部は回転性加速度減速度運動を起こし、遠心力と慣性力が発生します。
そうなると、頭蓋骨と脳の間に強引にすきまができます。それによって、脳表と硬膜をつなぐ橋静脈(下図参照)が引きちぎられ出血し、硬膜下出血やくも膜下出血が発生します。
参照元『ナースフル』
合わせて、頭蓋骨の内側に脳が何度も打ちつけられることにもなるので、損傷が大きくなります。
それによって、急激な心停止、呼吸停止、意識障害、痙攣などの死に至る危険性を伴う重度の症状から、不機嫌、嘔吐、ミルクの飲みの低下などの風邪やウイルス感染と間違われる軽度な症状のいずれかを発症します。
軽度な症状は、繰り返されることで重症に発展するので、 症状が軽いからといって、安心できるものではありません。
また、危険なくらいに体を揺さぶるということは、かなりの力で赤ちゃんを掴んでいるということになるので、助骨骨折などの骨折や、胸部の内出血などの合併症が同時に起きていることが多いそうです。
SBSが乳幼児に多い理由
SBSが乳幼児に多い理由は5つあるとのこと。
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大人が簡単に抱き上げて激しく揺さぶることができる大きさである。
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乳幼児の頭部は年長児に比べ相対的に重い。
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他の年齢に比べて頸部の筋力が弱い。
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生理的に頭蓋骨内の硬膜下腔、くも膜下腔が広いことで、橋静脈が破綻しやすい。
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脳の髄鞘化が不十分で、水分含量が多いため、脳実質障害を起こし易く脆弱である。
4と5は専門的になりますが、頭蓋骨内部も未発達でデリケートな状態であるということで捉えておけばいいのではと思います。
SBSを予防するためには
SBSは、一般的に子どもをなだめようと努力しても泣き止まないときに苛立って激しく揺さぶってしまうことによって起きることが多く、それ以外にも、揺さぶりによって泣き止むことを繰り返していく中で、徐々にエスカレートしてSBSに発展していってしまうこともあるそうです。
そこで、激しく揺さぶることの危険性を知り、子どもが泣いた時に揺さぶること以外の対処法を学ぶことによって予防できると考えられているとのことです。
アメリカのSBS予防のためのホームページには、「もし赤ちゃんが泣き止まないときは」というタイトルで、以下のような対処行動を挙げています。
- ミルクをあげる
- おしゃぶりを与える
- おむつをチェックする
- 赤ちゃんを胸の前で抱いてゆっくりと一緒に歩く
- ベビーカーに乗せて散歩、車に乗せてドライブする
- 歌を歌ったり、心地よい音楽を聞かせる
- 信頼できる人にしばらくの間見てもらって気分転換をする
4や5は、僕の両親も僕が夜泣きがひどい時にやっていたようで、僕の友人たちからもやっているという声を聞きます。
赤ちゃんが泣き止まないときの参考にしてみてくださいね。
SBSは育児に追い詰められた時に起きやすい
小児科の先生によると、SBSは育児に追い詰められた時に起きやすいとのことでした。赤ちゃんを育てることにおいての知識が不足していることや、周囲の助けが不足していることも、追い詰められてしまう要因になるとも言われていました。
SBSの加害者には男性が多く、これから男性の育児参加が多くなって来る中で、知識不足によって追い詰められた父親が、加害者になってしまう数が増えることを懸念しているそうです。
知識不足は、先述したような7つの対処法を知っておくだけでも全然違いますし、最近は男性向けの育児入門書もたくさん出ていますので、自分に合うものを手元に置いておくことで解消できるのではと思います。
身近な人に助けを求めることができない場合は、地域の支援機関に相談することで解決できることも多いので、保護者さんだけで抱え込まずに、外部の専門家に頼ってみてください。(最後に地域の支援機関へのリンクを貼っておきます)
不慮の事故からSBSに近い症状が出ることも
SBSを疑われるような症状が赤ちゃんに出てしまったケースには、育児疲れで赤ちゃんを抱っこしたまま居眠りをしてしまい、赤ちゃんを床に落としてしまったというものもあるということも聞きました。
献身的に子育てをしていたのに、こういうことで保護者も赤ちゃんの双方が不幸になってしまうのはとても悲しいです。
繰り返しになりますが、自分たちで抱え込んで追い詰められる前に、誰かに助けを求めてほしいと思います。
追い詰められる前に一度相談を!
こちらに、僕が知っている限りの支援機関を載せておきますので、気軽に相談されてみるとよいと思います。
地域の子育てサークル、子育て広場に参加する
お住いの地域に子育てサークルや、子育て広場がないか調べてみてください。
その地域の民生委員や保健師経験者、保育士経験者などが主催して、週に数回開催して場合があります。
そこに参加していろいろと相談にのってもらうと良いと思います。場所によっては、訪問支援へ繋げてもらえることもあるかと思います。
児童家庭支援センターに相談する
1997(平成9)年の児童福祉法改正によって新たに制度化された児童家庭福祉に関する地域相談機関であり、2019(令和元)年9月1日現在、全国132センターが協議会に加盟しています。
民間の児童福祉法人が運営しているところが多く、専門的知識をもった職員さんが支援してくれます。
電話かメールでコンタクトを取り、必要であれば訪問支援をしてくれます。困ったら、気軽に電話かメールをしてみてはいかがでしょうか。
行政の母子保健課などの機関を使う
もちろん、各地域の行政機関にも保健師さんが常駐しており、子育てに関する相談にのってくれます。
「こんなことで相談していいのだろうか」と相談をためらう人も多いと聞きますが、ひとりで抱え込む期間が長くなればなるほど、辛さも増しますし、疲労も蓄積されていきます。
支援機関には育児のプロフェッショナルが多いので、気軽に電話やメールで相談してみてくださいね。
参考にしたもの
■日本小児科学会『赤ちゃんを揺さぶらないで』PDF
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/070815_shaken.pdf
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