【傾聴力アップ】心理カウンセラーの「無条件の肯定的な眼差し(受容)」について理解し、実践していくには!?
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こんにちは。どいつよしです。
いきなり、映画『アナと雪の女王』の日本版主題歌『Let It Go 〜ありのままで〜』のサビからスタートしてみました。
今日のブログのテーマは、心理カウンセラーに必要な【無条件の肯定的な眼差し(受容)】です。
そう、クライエントが「ありのままの姿を見せて良いんだ」「ありのままの自分で良いんだ」と思うことができるようになるカウンセラーの態度で、心理療法の成功と関連があると言われる[ロジャーズの3条件]のひとつです。
ちなみに前回は、[ロジャーズの3条件]から心理カウンセラーの【自己一致】について書きました。
今回も、 H28年1月に参加した、『傾聴・心理臨床学アップデートとフォーカシング―感じる・話す・聴くの基本』という本を出されていて、ロジャーズの理論についても詳しい、関西大学大学院教授の池見陽先生の講座で学んできたことと、池見先生の著書から学んだことを織り交ぜて書いていきます。
また、[ロジャーズの3条件]は「受容、共感、自己一致」という訳され方が広く知られていますが、池見先生は【受容】という訳され方が好きではないそうで、【無条件の肯定的な眼差し】と表現されています。ですので、この記事でも、池見先生の表現を使って書いていきます。
なぜ【受容】ではなく、【無条件の肯定的な眼差し】なのか?
池見先生は、『傾聴・心理臨床学アップデートとフォーカシング―感じる・話す・聴くの基本』の中で、子育てを例えにして、【受容】ではなく【無条件の肯定的な眼差し】という表現を使っておられることを説明されています。
ようやく歩き始めた子どもがヨチヨチ歩いている。このくらいの子どもは、少し歩いては転んだり、尻もちをついたり。
そんな子どもの姿を親は「無条件」かつ「肯定的」な「眼差し」で見ている。
これは、子どもがヨチヨチ歩きを試みていることを「認める」ことでもある。
「ヨチヨチ歩きを受容する」となると、少しニュアンスが違っているように思われる。
確かに、「受容」という言葉は「受け入れて取り込むこと」という意味であることも考えると、ニュアンスが違いますよね。
また、『僕のフォーカシング=カウンセリング:ひとときの生を言い表す』では、
漢字の「受」は重たいイメージを伴う。わけがわからない攻撃的な人を前にして、「こんなに攻撃的な人もいるんだな」と「認める」ことはできても、カウンセラーがこの人を「受容」しなければならないと思うと、それはとてもたいへんなことだ。
と述べられています。
他にも、ロジャーズの原文【acceptance or unconditional positive regard】 の、【acceptance】は普通に訳すと「認める」となるはずで、「受容」という訳し方には疑問を感じるということも言われています。
以上のような理由から、池見先生は、【受容】という言葉ではなく、【肯定的な眼差し】という言葉を使われているのです。
無条件の肯定的な眼差しとは「認める」こと
池見先生によると、ロジャーズが伝えたかったカウンセラーの姿勢や態度としての無条件の肯定的な眼差しとは、
カウンセラーがクライエントを、無条件の肯定的な眼差しで見る、というか、認める。
ということ。
「あいてがどんな気持ちや考えを持っていても、それもその人らしさである。」と、その人のありのままを認めることが重要なのだそうです。
『アナと雪の女王』で例えると、どんなものでも凍らせてしまうことができる力を持った女性(エルサ)を眼の前にして、「どんなものでも凍らせてしまう力を持った人もいるんだな」と認めるということになりますでしょうか。
なぜ「認める」ことが必要なのか?
なぜ「無条件の肯定期な眼差し、というか、認めること」が心理カウンセラーに求められるのか。
池見先生の『傾聴・心理臨床学アップデートとフォーカシング―感じる・話す・聴くの基本』を参考に書いていきますね。
条件的な人間関係から自己概念は作られる
まず、知っておきたいこと。
僕たちは、これまでの人生の中で出会った、親、兄弟、友人、先輩、上司などとの人間関係のあり方を通じて、「自分」というものを形作ってきているけれど、そういった人間関係のほとんどは、「条件的である」ということ。
例えば、小さい頃から、親や身近な大人から「お前は明るくて良い子だね」と言われて育てられた人は、実は、「明るい」という条件を満たす限り「良い子」だと褒められる、という暗黙の条件を課せられて育ってきています。
この暗黙の条件をクリアしながら育っていくなかで「自分は明るい」と思うようになります。
このような、自分で自分を捉えたときのイメージのことを「自己概念 byロジャーズ」と表現します。
条件的な人間関係のもとで「明るい自分」は形作られ、自分で自分を捉えたときのイメージ(自己概念)も「明るい自分」だと認識していくというわけです。
※さらに、「明るい自分」という自己概念が、「もっと明るい自分」を形作っていく。そうすると、「もっと明るい自分」へと自己概念が強くなる・・・というように強化のスパイラルになって続いていきます。
自己概念に伴う価値条件が素直に感じることを妨げる
次に知っておきたいこと。
自己概念は同時に「自分はこんな人でないと生きている価値がない」といった価値条件を伴うということ。
だから、「自分は明るい」と思っている人にとって、〈暗い〉〈悲しい〉〈泣きたい〉というような「明るくない」感じは、「自分は明るくしてないと生きている価値がない」という自分の存在を否定するものであり、感じてはいけないものになってしまいます。
そこで、どうするか。その人はそれを感じないようにしてしまったり、「最近、疲れが取れない。病気かもしれない」と、歪曲して別のものとすり替えて理解しようとしてしまうのです。
つまり、人は「自分はこんな人だ」という自己概念があるから、その概念に合わないものは「自分の存在が脅かされるもの」として、意識から締め出そうとするということです。
カウンセリングに訪れる人は、自己概念に合わないものを体験していて、それを認めることができず、意識から締め出しても締め出しても解消されることがなく、生きるのがとても辛くなっている人であると考えられます。
心理カウンセラーに求められる態度
このような人が良くなっていくには、今まで意識から締め出してきたものに対して、「あってもいいんだ」と気づくこと。
どんな気持ちであれ、それを自分のものとして認めることができるようになることが必要なのだそうです。
こうなっていくには、どんな気持ちであれ、それを無条件に認めてくれる相手が必要。
その人こそが心理カウンセラーということになります。
心理カウンセラーに「あなたが明るいときも、暗いときも、どちらにも関心がありますよ。」と、それがあなたらしさであると、無条件に認めてもらってはじめて、クライエントは「暗い感じがあっていいんだ」と気づくことができるということなんですね。
また、「無条件の肯定的な眼差し、というか、認める」ことは、安心して話ができる場を作ることにも役に立つと思います。
「あなたは何を言ってもいいし、どんなことを感じてもいいんですよ」という、安心な場があってこそ、クライエントは、普段の人間関係では言えないことや、感じてはいけないと思っていることが言えるのだと思います。
そんな安全安心の場と時間を提供できる、心理カウンセラーを目指したいですね。
実践していくには?
「無条件の肯定的な眼差し、というか、認めること」を実践していくにはどうすればいいのでしょうか。
眼の前の人の存在自体を認める
僕は、まず、眼の前の人の存在自体を認めることからはじめました。これは、赤ちゃんのお世話をする仕事をしていた経験が生きています。
生まれたばかりの赤ちゃんは、泣く、ミルク飲む、寝る、排泄する、が主な活動で、生産性のあることはできませんよね。
でも、そこにいるだけでオッケーなんです。泣いてもオッケー。ミルク飲んでもオッケー。すやすや寝てもオッケー。ウンチをしてもオッケー。
「今この瞬間、ただそこに存在している。それだけでオッケー。」という感覚です。この感覚を応用して、話を聴くようにすることで、「無条件に関心を向ける」「ありのままを認める」ということができるようになっていきました。
ジャッジしない
そして、もうひとつ、ジャッジしない。これは、[魔法の質問]のマツダミヒロさんから学んだことですが、「まずは相手の話を受け止め、否定しない」ということです。
「受け止める」というのは、否定も肯定もせずに、「この人はこういうふうに考えているんだ」と、事実としてとらえること。
話を受け止めてあげることにより、「私はあなたの話しをちゃんと聴いていますよ」という意思表示にもなります。
ジャッジしないことを意識することで、否定や肯定といった、評価のメガネを通さずに、話し手のありのままを認めることができるようになってきたと思います。
自分の気持ちを「あるよね〜」と認める
それから、自分が感じていることに、とりあえず「そんな感じもあるよね」と言ってみるようにしています。いろいろ考えずに、まずは「あるよね」と言ってみる。
こうすることで、自分が感じているいろんな気持ちを、「ある」と認めることができるようになってきて、それが、話し手のありのままの姿を「認める」ことにも良い影響を与えているように感じます。
結論に至る思考の過程を充実させる
池見先生によると、「無条件の」という態度が維持できないことがあるのは、聴き手の一般的な理解から生じる感情や「思いやり」が、無条件になるのを難しくさせるからなのだそうです。
そして、重要なのは結論ではなく、結論に至る思考の過程を充実させることだということを、聴き手として認識しておくと楽になると述べられています。
思考の過程を充実させることの効果としては、
思考の過程を充実させることにより、その思考の過程が充実したもので、本人が深く自分を見つめ、そこにある様々な実感を注意深く吟味したうえで結論に至ったなら、
それがどのような結論であれ、それは本人にとっては本来的でよい結論であると言えるだろうし、また、周りのほとんどの人は、その過程から生じた結論には賛成するだろう
とのことです。
思考の過程を充実させるには、「存在自体を認めること」や「ジャッジしない」という態度を維持しつつ、繰り返しや要約を使いながら、話をじっくり聴いていくことが大切だなと思いました。
おわりに
いかがでしたか?今回は、ロジャーズの3条件の中から、「無条件の肯定的な眼差し(受容)」について、書きました。
ロジャーズの三条件の中で、一番理解していると思っていた「無条件の肯定的な眼差し(受容)」でしたが、池見先生の講座と書籍から学んでみると、
そもそも、なんで心理カウンセラーには、無条件の肯定的な眼差しが必要なのか?ということから理解をすることができました。
また、産業カウンセラー養成講座で学んだことをさらに深めて実践していくヒントも得られたので、本当に良かったです。
クライエントのありのままの姿を「認める」ことを、これからも実践し続けていくことで、クライエントが、
これでいいの〜♪
自分を好きになって〜♪
これでいいの〜♪
自分を信じて〜♪
ひ〜か〜り〜♪
あびな〜が〜ら〜♪
あるき〜だそう〜♪
と変化していけるような、お手伝いができればいいなと思います。
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引用・参考文献
今回のブログで参考にしている池見先生の著書です。3冊を紹介します。
『心のメッセ-ジを聴く 』は、ロジャーズの3条件を「カウンセリング・マインド」という表現で説明していて、普段の生活レベルへの活かし方も書かれています。
ロジャーズの来談者中心療法についても、3条件をはじめ、たくさん書かれていますし、3条件の実践方法も書かれていて、すぐに実践へ移行しやすいものになっています。
一方で、『傾聴・心理臨床学アップデートとフォーカシング―感じる・話す・聴くの基本』はロジャーズの理論についての誤解を解く内容が書かれていたり、来談者中心療法以外の療法についても、池見先生が解説をされています。
そして、その上で、来談者中心療法のアップデート版ともいえる、フォーカシング指向心理療法について、事例を交えて書かれています。
ロジャーズをきちんと理解した上で、ジェンドリンを知ることができる、一石二鳥以上のお得な本でもあります。
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『僕のフォーカシング=カウンセリング:ひとときの生を言い表す』は、池見先生のフォーカシング指向心理療法について、日本のある場所で行ったフォーカシングワークショップでの出来事が書かれてあります。
体験ワークごとに、池見先生による詳しい解説があり、池見先生のフォーカシングはこういうものなんだ、という理解がすすむ本です。
先に挙げた2冊と比べて、ロジャーズについての記載は少ないですが、表現方法はいちばんやさしいのではないかと思います。
ぜひ、手にとって読んでみてくださいね!
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