【傾聴力アップ】心理カウンセラーの「自己一致」について理解し、実践していくには!?
こんにちは。どいつよしです。
H28年1月に、『傾聴・心理臨床学アップデートとフォーカシング―感じる・話す・聴くの基本』という本を出されていて、ロジャーズの理論についても詳しい、関西大学大学院教授の池見陽先生の講座に参加してきました。
前回は、この講座で、[ロジャーズの3条件の「受容・共感・自己一致」が姿勢や態度のことである]、ということを学んだことを書きました。
今回は、そこから一歩進んで、心理カウンセラーとして知っておきたい、ロジャーズの3条件のうちの「自己一致」について、学んできたことを書きますね。
実践していくヒントもお伝えしますので、最後まで読んで頂けると嬉しいです。
自己一致と不一致とは?
そもそも、自己一致している状態とは、わかりやすく言うとどんなことを言うのでしょうか。池見先生の著書『心のメッセージを聴く 』を参考に、調べてみました。
ロジャーズは、下にあるようなベン図を用いて説明しています。
青の円を自己概念。緑の円を実感(悲しい、寂しい、嬉しいなど特定の内容をもった感情よりも複雑で漠然とした、実際に感じられる体験)とします。
自己概念とは、「自分はこういう人間だ」というような自分の定義や自己像のこと。
子どもの頃からの、両親や教師や友人といった[重要な他者]との関係によって形作られると考えられています。
「私は外向的だ」「私は子どもが好きだ」「私は泣かない」「私は辛抱強い」など、例えを挙げようとすると枚挙にいとまがありません。
自己概念がいったんできあがると、人はその概念に一致する生き方をしようとします。
また、できあがってしまった概念は変化しにくい性質を持っているので、固定化しやすいのだそうです。
例えば、僕が「私は外向的だ」という自己概念を持っていたとすると、「僕は外向的な人間だ。」と固定して捉えるようになります。
そうなると、僕の生き方や体験の仕方は、「私は外向的だ」という自己概念によって拘束されるようになっていきます。
そして、気付かないうちに、「私は外向的であらねばならない」とか「私は外向的であるべきだ」という強い意味を持つようになってしまいます。
でも、諸行無常という言葉があるように、心の実感は日々刻々と、今この瞬間も変化してゆくもの。
いくら「私は外向的だ」と思っている人でも、実際の体験として、誰にも会いたくないときはあります。
ここで生じる、「私は外向的であらねばならない」という固定化された自己概念と、「誰にも会いたくない」のような、日々刻々と変化する心の実感とのギャップが【不一致】ということになります。
さらに、【不一致】の状態である時は、実感されていることの多くは自己概念には素直に認識されず、否定されたり歪曲されてしまうのだそうです。
逆に、自己概念と実感の2つの円が完全に重なりあい、今この瞬間の変化の中における心の実感が全て自己概念に受け入れられ、統合される状態が理想的な自己一致なのだそうです。
クライエントは不一致の状態でやってくる
ロジャーズは、自己概念と実感の【不一致】が悩みや不適応、神経症、問題行動などといった心理的な困難の一つの要因であると考えたのでした。
カウンセリングに来られる人は、その人の自己概念と実感していることの間で、何かしらの【不一致】を抱えていらっしゃるということになります。
そして、カウンセリングを通じて、気付きや学びを得て、成長や変化をしていく過程で、【一致の状態】へと戻っていくことになるってことですね。
先ほどの例えにあてはめると、「僕には外向的な面も、内向的な面もあって、誰にも会いたくない時もある」という柔軟な自己概念になり、実感していることとの重なりが大きくなっていくということになります。
なぜカウンセラーが自己一致している必要があるのか?
カウンセラーが自己一致していることが必要であることについて、池見先生の著書『心のメッセージを聴く 』には以下の3点が記載されています。
・カウンセラーの自己一致が模範となって、クライエント自身が素直に「体験」を探索し、表現することを促進する。
・クライエントが気づいていないことをカウンセラーが感じ取り、それを表現することによって、クライエント自身の気付きが促進される。
・素直に感じるところでのクライエントとカウンセラーのやりとりは、治療的な関係を築き上げる基盤となる。
カウンセラーが【一致の状態】であることが、クライエントに良い影響を与えることになるということがわかります。
また、カウンセラーが気を付けなければいけないことは、「カウンセラーらしく振る舞わなければならない」という自己概念を持ってしまわないこと。
それは、「カウンセラーらしく振る舞わなければならない」となってしまうと、たちまち、感じていることや体験していることとの【不一致】に陥ってしまうから。
そして、「一致の達人」になろうと思う必要もないこと。
人生の中で常時「一致」している必要はないし、常にそのような感受性をもって生きることは、よほどの人でなければ不可能だからだそうです。
大切なのは、カウンセリングの時間の中では【一致】している必要があるということです。
カウンセラーは一人の人間として誠実であれ
池見先生によると、ロジャーズが伝えたかったカウンセラーの姿勢や態度としての自己一致は、
カウンセラーが自己一致している、というか、誠実である。
ということ。
カウンセリングの時間の中で、「カウンセラーらしく振る舞おう」とするのではなく、その瞬間瞬間で一人の人間として誠実であることが第一条件なのだそうです。
それは、クライエントが誠実に自分の気持ちと向き合おうとしている時に、カウンセラーが「カウンセラーという役割を演じる」もしくは「カウンセラーのふりをしている」ということであると、かえって足をひっぱることになるから。
カウンセラーが自分自身を偽っているので、クライエントの模範となることができず、クライエント自身が素直に「体験」を探索し、表現することができなくなってしまいます。
そうではなく、一人の人間として「私はあなたの話しを聴いていて、私も悲しくなってきました」と、自分の感じていることを素直に見つめ、それを表現でき、誠実に発言する。
また、素直に自分の理解を自由に話すことができる。
こういうカウンセラーの態度があってこそ、クライエントも自身の悲しさと向き合うことができるし、人間的な繋がりが感じられるのだそうです。
ちなみに、池見先生も「クライエントの話しが退屈過ぎて眠気に襲われながらも、カウンセラーとしての役割で話を聴き続けた」という、「カウンセラーが誠実でない」ご経験をされています。
このお話しは、池見先生の著書『傾聴・心理臨床学アップデートとフォーカシング―感じる・話す・聴くの基本』に詳しく掲載されてありますので、ぜひ、読んでみて頂きたいです。
僕も、この池見先生のエピソードが好きで、折に触れて読み返すようにしています。
どう実践していくか?
「自己一致、というか、誠実である」ことを、実践していくにあたって、まずは、「カウンセラーらしく振る舞おう」とならないように気をつけることが大事かと思います。
でも、頭ではわかっていても、クライエントから「先生お願いします。」と言われると、知らず知らずのうちに、「カウンセラーらしく振る舞おう」となってしまいそうです。
そこで、行動から入っていくのが良いのではないかと考えます。
クライエントの話を聴いて、自分がどんなことを感じたのか、クライエントに伝えてみる。それが難しいなら、書いてみる。
クライエントの話しを要約する時に、「自分はこのように理解しましたが合っていますか?」という意味で要約をする。
最初は、「カウンセラーらしく振る舞おう」というのがあったとしても、行動を続けていくうちに、それが薄れていって、いつの間にか「偽りのない、一人の人間として」クライエントの話に耳を傾けることができるようになっていくのではないでしょうか。
また、普段から折に触れて自己概念をチェックすることも良いのではないかと。
「一致の達人」になる必要はないということでしたが、自分が感じたことや体験したことについて、「私らしくない」というような認められない気持ちが湧き上がってきたら、
「私は〇〇である」という自己概念が、狭くなり過ぎてはいないか、強くなり過ぎてはいないか確認して、「私は〇〇もあるし、〇〇もある」というような、柔らかな自己概念になるように軌道修正をしていくということですね。
おわりに
いかがでしたか?今日は、池見先生の講座で学んだことから、心理カウンセラーとして知っておきたい「自己一致」について書きました。
池見先生の講座に参加することで、カウンセラーが自己一致しているというのはどういうことなのか、理解することができました。
また、こうやってブログに書いていく中で、そもそも自己一致と不一致ってなんなのか?というところについても理解が進みました。
池見先生から「自己一致」について学んだことの中から、僕は、“クライアントとの関係において、「カウンセラーという役割を演じる」もしくは、「カウンセラーのふりをしている」のではなく、瞬間瞬間において「偽りのない」素直な人間として、存在していること。”ということを、まずは大切にしていきたい思います。
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引用・参考文献
今回のブログで紹介している池見先生の著書です。2冊を紹介します。
『心のメッセージを聴く』は、中核3条件を「カウンセリング・マインド」という表現で説明していて、普段の生活レベルへの活かし方も書かれています。ロジャーズの来談者中心療法についてもたくさん書かれています。
一方で、『傾聴・心理臨床学アップデートとフォーカシング』はロジャーズの理論についての誤解を解く内容が書かれていたり、来談者中心療法以外の療法についても、池見先生が解説をされています。
そして、その上で、来談者中心療法のアップデート版ともいえる、フォーカシング指向心理療法について、事例を交えて書かれています。
ロジャーズをきちんと理解した上で、ジェンドリンを知ることができる、一石二鳥以上のお得な本でもあります。
傾聴・心理臨床学アップデートとフォーカシング―感じる・話す・聴くの基本
- 作者: 池見陽
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