ココロの皮むき

産業カウンセラーが学んできたことを書くブログ

赤ちゃんには抱っこが必要だとわかる有名な心理学者の研究とは?

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こんにちは。どいつよしです。

 
 
2019年7月20日のブログにも書いたように、乳児院時代に学んだこともアウトプットしていくことにしました。
 
 
今回は、僕が子育て経験ゼロの状態から乳児院に就職して最初に教わり、その後、子ども達と関わる中でも一番大事にしていた抱っこについてです。
 
 
赤ちゃんにとって抱っこは、一番身近な大人を直接肌で感じて安心できる、大切なスキンシップのかたちです。
 
 
そして、毎日抱っこされ、話しかけられることで「自分は無条件で愛されている」という自己肯定感を育んでいくことになります。
 
 
抱っこは僕たち大人が思っている以上に、赤ちゃんにとって、なくてはならないものなのです。
 
 
今回は、抱っこの必要性を裏付ける有名な心理学者による実験を紹介しますね。
 
 
それではいってみましょー!
 
 

ワトソンの触れない子育て

アメリカの心理学者にジョン・ワトソンという人がいます。心理学を学ぶと必ずといっていいくらい名前が出てくるお人です。動物や人の発達は経験による条件付けにより成り立つという考えから、行動主義を提唱し、彼のおこなった実験は心理学に大きな影響を与えています。
 
 
「健康な1ダースの乳児と、育てる事のできる適切な環境さえ整えれば、才能、好み、適正、先祖、民族など遺伝的といわれるものとは関係なしに、医者、芸術家から、どろぼう、乞食までの様々な人間に育て上げることができる」
 
とか、
 
生後11ヶ月の男の子に恐怖の条件付けを施し、おとなが抱く不安や恐怖の多くは幼年期の体験に由来しているとした、「アルバート坊やの条件付けの実験」
 
が特に有名です。
 
 
そんなワトソンが提唱した子育て法がありました。それは、「子どもに触れない育児」です。
 
 
子どもに触れない育児とは、「子どもに抱っこやキスをしないこと、子どもに触れることは子どもを甘やかしダメにする」として、泣いてもできるだけ放っておくやり方です。
 
 
そして、当時はそれが合理的なやり方として子育ての主流になっていったんです。
 
 
お母さんたちは、
 
 
赤ちゃんが泣いてミルクを欲しがっても、決められた時間までベッドに入れて、抱っこしない。
 
 
かわいがりたい気持ちをグッとこらえて、なるべく触れないようにする。
 
 
ということを徹底しました。
 
 
子どものためを思って。
 
 
そしてどうなったか?
 
 
その影響が現れはじめたのが10年後。アメリカの心理学者プレスコットが、その子たちが成長してから多くの問題を抱えるようになったと指摘しました。
 
 
・常に不安感が強い
 
・人とよい人間関係が作れない
 
・周囲のことに関心がもてない
 
 
といった問題を次々と引き起こす人が増えたということでした。
 
 
また、触れない育児を積極的に取り入れたアメリカのある養護施設では、1年間に9割もの乳児が死亡しました。
 
 
栄養状態をよくし、高い医療を施すなど、生活環境の改善に努めたものの、子ども死亡率は高いままでした。
 
 
スキンシップがないことのストレスによって、成長ホルモンの分泌が止まってしまったのが大きな原因ではないかといわれています。
 
 
ちなみに、僕がフォーカシングを教わっている日本の心理学者の池見陽先生は、著書の中で行動主義の学習理論に触れ、「動物実験で得られた理論で、人間を人間らしくしている性質、たとえば[愛]ということには何も語られない」と述べています。
 
 
たしかに、ワトソンの提唱した子育てには、池見先生の仰るように[愛]が感じられませんし、人間を人間らしくしている性質を否定したもののように感じます。
 
 

ハーロウのサルの愛着実験

もう1人有名な心理学者を紹介しましよう。ハリー・ハーロウです。
 
 
ハーロウも心理学の教科書によく出てきます。
 
 
ハーロウといえば「アカゲザルのあかちゃんの愛着実験」です。
 
 
これは、サルの赤ちゃんがいる檻に、母親代わりのミルクが出る針金の人形と、ミルクが出ないやわらかい布の人形を入れ、赤ちゃんがどういう行動をするかを観察するものです。
 
 
そしてどうなったか?
 
 
赤ちゃんはミルクを飲むときだけ針金の人形のところへ行き、あとは布の人形にずっとしがみついていたのです。
 
 
このことから、サルの赤ちゃんはたとえミルクが出ていようとも針金の人形には愛着をしめさず、やわらかい布の人形に触れたがり、愛着を示すことがわかりました。
 
 
その後、「布製の母親で子どもは育つのか?」ということで研究は続けられますが、布製の母親でも正常には育たないことがわかっています。
 
 
体は大きくなりますが、社会性に乏しく、サルの集団の中で問題を起こして孤立したり、自傷行為をしたりする子どもになってしまいました。
 
 
針金製または布製の母親で育ったサル達を解剖すると、正常な脳と比べて発達が悪かったそうです。
 
 
セロトニンやノルアドレナリンなどのホルモンが非常に少なかったこともわかっています。
 
 
人間の場合、セロトニンやノルアドレナリンなどの働きが不調に陥ると、脳の機能不全が引き起こされます。
 
 
そして、意欲の低下、不安やイライラ、不眠などの症状が現れるといった、いわゆる、うつ病になってしまいます。
 
 
もしかすると、サルの子どももうつ病に近い状態になっていたのかもしれませんね。
 
 
このハーロウの実験からわかることは、針金よりも布。布よりも人肌。ということで、生身の人間の温かいスキンシップは代わりになるものがなく、子どもの心身の育ちに、ときには命に関わるほどの大きな影響をおよぼすということですね。
 
 

おわりに

いかがでしたか?
 
 
今回は、赤ちゃんにとってなくてはならない抱っこの重要性について、有名な心理学者の実験を用いてお伝えしました。
 
 
彼らの実験は、今の時代からは問題視されるような内容ですが、それがあったからこそ、生身の人間による抱っこやスキンシップが大事だということがわかったと考えると意味のあるものだったんだなと思います。
 
 
今回のブログで、抱っこの大切さが少しでもお分かりいただけたら幸いです。
 
 

参考文献

幸せになる脳はだっこで育つ。-強いやさしい賢い子にするスキンシップの魔法-

幸せになる脳はだっこで育つ。-強いやさしい賢い子にするスキンシップの魔法-

 

 

僕の乳児院時代のバイブルといえる本のひとつです。抱っこをはじめとするスキンシップの重要性をデータをもとに伝えてくれます。

 
また、忙しい時でもスキンシップがとれる方法や、スキンシップを嫌がる子どもへの対応法など、様々なスキンシップの取り方も書かれていてオススメです。