【SFA】ゴール設定は問題の消失ではなく、解決の存在を明らかにすることが大切
こんにちは。どいつよしです。
僕が好きなカウンセリングの手法のひとつ、「ソリューション・フォーカスト・アプローチ」(以下SFAと記載)。
SFAが素晴らしいものであることのひとつに、ゴール設定をすることがあります。
悩みや問題はあるままで、先にそれが解決した姿を描くのです。
悩みや問題と解決は関係がない。
ここがSFAのユニークなところでもあります。
ゴールを設定するには、ゴール作りの質問を使います。
面接の初期段階で使うことで、大きなゴールを設定し、面接の方向性をある程度決めることができます。
とても便利な技法なので僕も好んで使っていますが、押さえておかないといけない大事なことがあることを知りました。
それは、
ゴール設定は問題の消失ではなく、解決の存在を明らかにすること
だということです。
これはいったいどういうことなのか、早速書いていくことにしますね。
ゴール作りの質問についてのおさらい
まず、ゴール作りの質問についておさらいをしましょう。
SFAでは “問題” と “解決” は別であると考えます。
その人が問題を抱えながらも、今以上に行き行きと自律的に生きていける、そういう状態を “解決” と捉えます。
そして、「クライエントは自分の生活の専門家である」ということを強調し、解決の方法を知っているのはクライエントであると考えます。
SFAのカウンセラーは、クライエントを変化させようとするのではなく、既に持っているリソース(資源)を活かして、いかにそれらを利用していけるかを目指します。
クライエントが既に持っている解決の方法に気付いていくことを促していくには、問題には深く入り込まず、面接を通してクライエントがどうなりたいのかを、先に明らかにすることが有効になってきます。
面接の方向性を決めるには以下の2つのゴールを設定することが必要です。
-
大きなゴール:クライエントが相談を通じて”なりたい姿”(漠然としたイメージ)
-
小さいゴール:大きなゴールを実現する為にまず何ができるか現実的に達成できる課題。
ゴール作りの質問は、主に大きなゴールを設定する時に使います。
ただし、このゴール作りの質問を使った時に注意しないといけないことがあります。
それは、質問に対する答えが「問題の消失」である場合です。
ゴール設定は問題の消失ではない
クライエントが大きなゴールを「問題の消失」としたならば、問題の原因を追求していかないといけなくなり、SFAの目指す方向とは違ってきます。
『インスー・キム・バーグのブリーフコーチング入門』の著書のピーター・ザボは、ゴールの設定をするにあたって、
「クライエントの目的地を取り決めることは、一見とても簡単に思えますが、驚くほどむずかしいものです。」
と言っています。
それは、多くのクライエントにとってのゴールとは、自分の人生から困難なことや不都合なことを取り除くという、問題の消失だから。
新しい解決や行動ではないのです。
でも、これは仕方のないことかなと思います。
面接開始時点でのクライエントは、問題ばかりをクローズアップしています。
新しい解決や行動について考えるということはすぐにはできないでしょう。
問題の消失がゴールになった例えをあげるならば、
「イライラしなくなることです」
「胃の張り詰めた感じがなくなることです」
「仕事に行かなくて済むようにすることです」
「慢性の倦怠感がなくなることです」
というような感じです。
問題の消失をゴールにしてしまうと、どうしても原因探しに進まざるを得なくなります。
繰り返しになりますが、SFAにおける解決とは、
【その人が問題を抱えながらも、今以上に行き行きと自律的に生きていける状態】
でした。
そして、解決の状態へ、クライエントが既に持っているリソースを活かして歩んでいけるようにサポートするわけです。
SFAでは原因探しをしませんので、それは避けないといけません。
ゴール設定が「問題の消失」になりそうな時に使うと効果的な質問は、
「それがなくなったら、その代わりに手に入るものは?」
「それがなくなったら、その代わりに何をしていますか?」
「それがなくなったら、今とは何が違いますか?」
など、問題が消え去る代わりにどんなことが起こるかを聞いていきます。
Co「この面接があなたの役に立つためには、ここでどんなことが起こればいいですか?」(ゴール作りの質問)
Cl「イライラしなくなることです」
Co「イライラすることがなくなったら、その代わりに手に入るものは何ですか?」
Cl「いつも心穏やかに過ごせる時間です」(大きなゴールの存在が明らかになった)
Co「いつも心穏やかに過ごせる時間が手に入ったらよいと思われるのですね。」
Cl「そうです。」
というような流れです。
ここではスムーズに終わらせていますが、大きなゴールは、クライエントが納得して、かつ、実現ができそうであるものになるまで決めてはいけません。
大きなゴールの設定は慎重さが必要だということです。
解決へは別のルートで向かうのだ!
SFAでは、問題が消え去らなくても設定したゴールにはたどり着けると考えます。
問題の消失というルートを通らなくても、別のルートを通ればいいじゃん!ってことです。
そして、別のルートを通るべく、様々な技法を使ってクライエントのリソースを探し、それを上手に利用できるようにサポートしていくわけです。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
今回は、ゴール作りの質問を使って面接を通じてのゴールを設定する際に、問題の消失ではなく、解決の存在を明らかにすることが大切であるということを書きました。
ゴール設定は、意外と難しいところがあって、慎重さもともなう。ゴール設定は、解決の存在を明らかにすることに気を遣う。問題の消え去った代わりに、手に入るもの・起きることが大きいゴールになる。問題の消失がなくても、解決へ向かうことはできる。
ということがおわかりいただけたかと思います。
僕も、この記事を書いていて、問題の消失をゴールに設定したまま話をすすめていったことがあることを思い出しました。
とりあえずビールならぬ、とりあえずゴール。
という姿勢だと、面接の初期段階で思わぬ落とし穴にはまってしまい、そのまま原因探しの深い闇に落ちていってしまう危険性があるのではと思います。
ゴール作りの質問は、僕にとって欠かせないものとなりつつありますが、【その人が問題を抱えながらも、今以上に行き行きと自律的に生きていける、そういう状態を “解決” と捉える】というSFAの基本理念を忘れずに、解決の存在を明らかにするためのものとして使っていこうと思います。
ゴール作りの質問についてはこちらも御覧くださいね。
参考文献
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- 作者: ピーターディヤング,インスー・キムバーグ,桐田弘江,玉真慎子,住谷祐子
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