アドラー心理学「嫌われる勇気」は、嫌われる(かもしれない)恐怖にあらがうこと!?
こんにちは。どいつよしです。
今日は久しぶりにアドラー心理学について書きます。
アドラー心理学について書かれた本といえば、大ヒットした『岸見一郎著 / 嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』が有名ですよね。アドラーを世間一般に認知させるきっかけになったと言って間違いない本です。
ですが、ソクラテス以来の哲学的な伝統を踏まえた、哲人と青年が対話する形で話が進んでいく内容が合わなかった人からは、「結局読んだけどよくわからなかった」という感想もよく聞かれます。恥ずかしながら、僕もその1人でした。
そして、本の内容をちゃんと理解できなかった人や、本のタイトルだけを見て読んだつもりになっている人によって、「嫌われる勇気」という衝撃的な言葉だけが独り歩きをしていってしまったんですよね。
「自分らしく生きるためには嫌われなさい」とか「嫌われることを前提に行動したらいいんだ」という誤った解釈をされていることが多かったように思います。
2015年に岸見先生の講演会に参加した際には、先生の口からも「嫌われる勇気という言葉だけが独り歩きしていってしまっている」という言葉が出ていました。
岸見先生が伝えたかった「嫌われる勇気」とは何だったんだろう?という思いが強くなったので、再び『岸見一郎著 / 嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』を読んで、わかったことを今回はシェアしたいと思います。
「嫌われる勇気」の誤解を解く!
まずはじめに、世間に誤った解釈で知られてしまっている点について書きます。
本の中で、それについて触れられている箇所があります。本のP163の哲人と青年のやり取りです。
青年「先生は、わたしに【他者から嫌われろ】と?哲人「嫌われることを恐れるな、といっているのです。」青年「しかしそれは・・・。」哲人「わざわざ嫌われるような生き方をしろとか、悪行を働けといっているのではありません。そこは誤解しないでください。」
このように、哲人も「嫌われる」という言葉に対して誤解しないよう説いています。
「嫌われる勇気」を正しく理解してみる!
では、ここから「嫌われる勇気」を正しく理解しようと頑張っていきます!
嫌われる勇気の必要性について本書では、以下のように書かれています。
「すべての悩みは、対人関係の悩みである」とアドラー心理学では考え、「嫌われる勇気」をもつことで、対人関係は一気に軽いものへと変わる。
そこで、対人関係の悩みにはいろんな種類があるので、「どんな対人関係の悩みを持っている人に、嫌われる勇気が必要なのか?」という切り口で考えてみることにしました。
嫌われる勇気が必要な人はどんな人?
嫌われる勇気が必要な人は、
- 他者からどう思われているかを気にすることにより、何らかの悩みや問題を抱えている人
- 絶えず人に合わせて生きていくことに辛くなっている人。
- 自分よりもいつも他者を優先してしまうことに悩んでいる人。
- 自分が望んだ人生の選択をしてこれなかったと思っている人。
- 自分の立ち位置がわからなくなって困っている人。
- 自意識が過剰なために外へ出ることへのストレスが大きい人
などが考えられます。
対人関係の悩みや問題の黒幕は本能にあり!
このような悩みや問題が発生する背景には、「他者から嫌われたくないと思う」人間の本能的な欲望であり衝動が影響しているとのこと。
わたしたちはほぼ誰もが他者に嫌われることを望んでいないし、わざわざ嫌われたいと願う人もほとんどいない。程度の大小はあるかとは思いますが、わたしたちは皆、本能レベルで嫌われることを望んでいないということです。
本能的に他者から嫌われたくないと思っているので、誰かから嫌われた時、または嫌われているのではないかと感じた時に、辛い気分を味わいます。
だから、他者に好かれようと頑張ったり、認めてもらおうとしたり、はじめから嫌われることを避けるような行動をとろうとしたりします。
他者から嫌われたくないと思う程度が大きいと、いつも自分よりも他者や周りのことが気になるので、このような行動を選びがちになり、先に述べたような悩みや問題を抱えやすくなるということです。
他者からどう思われているかを気にして、絶えず人に合わせて生きるのは不自由ですしとても疲れます。また、辛い思いをするのを怖れて、他者との関わりを断ってしまっては、3大欲求のひとつの集団欲が満たされないので幸せにはなれません。
そこで、嫌われる勇気を持つことができれば、悩みや問題は軽くなるよってことですよね。
悩みや問題が軽くなった状態とは?
悩みや問題が軽くなった状態とはどのような状態なのでしょうか。
他者からどう思われているかを気にしない状態、絶えず人に合わせて生きていない状態です。
それは、他者の目、評価などから自由になるということです。そういうものを気にせずに自由に自分の人生をデザインして生きていくようにするということです。自分の立ち位置をしっかりと確立していくということもできると思います。
「嫌われる勇気」の正しい意味とは?
他者の目、評価などを気にせずに、自由に自分の人生をデザインして生きていくようにしていこうとすると、必ずくっついてくるのが「嫌われる(かもしれない)恐怖」です。
何度も書いていますが、本能レベルの、あって仕方のないものです。ここで、本能的な欲望に負けてしまわずに、あらがって、自由に生きていく方を選んでいきましょう!というのが「嫌われる勇気」なのです。
「嫌われる勇気」とは、 嫌われる(かもしれない)恐怖にあらがうこと。
自由に自分の人生をデザインして生きていくようにしていこうとするには、必要不可欠なものであるということが、ここでわかりました。
嫌われる勇気を持つには?
本能的な欲望である「嫌われたくないと思う」ことにあらがっていくのは、長らく「嫌われたくないと思う」ことを優先してやってきた人にとっては、なかなか一筋縄ではいかないものだと思います。
そこで、役に立つのが「課題の分離」です。
本のP164にこのような哲人のセリフがあります。
「どんなに自分が努力をしても10人いて何をしても好きでいてくれるのはせいぜい2人程度。1人は何をしても嫌われる。残りの7人はその時その時で態度を変える。どんなに頑張ってもどうしようもない部分があることに、エネルギーを費やすくらいなら、何をしても好いてくれる2人と仲良くして、あとは自分のためにエネルギーを使ったほうがよい。」
このように、どんなに努力を重ねたとしても、それに関係なく、わたしのことを嫌う人はいるというのが事実です。
結局、「好きか嫌いかを決める」のは他者の課題であり、わたしにはどうすることもできないのです。
「好きか嫌いか」は他者の課題。自分の課題は「嫌われたくないけど、嫌われること怖れずに自分を貫けるかどうか」です。
このように、自分の課題と他者の課題をはっきり区別することが「課題の分離」です。
ここで注意することは、「他者の課題は切り捨てるが、他者を切り捨てることではない」ということです。
アドラー心理学では、人は対人関係の中でしか幸せを感じることができないと考えます。「課題の分離」は、他者との関わり方を考え直して行動を変えていくこととも言えます。他者を切り捨ててしまうと、幸せを感じることができなくなるそうなので気をつけてください。
この「課題の分離」を知っておくことで、嫌われる勇気を実行しやすくなると思います。「課題の分離」については、こちらも読んでみるとより理解が深まると思います。
少しずつ自分でデザインする生き方へ変えていく
「課題の分離」をしながら、少しずつ他者との関わり方を変えていくようにすると、嫌われる(かもしれない)恐怖を大きく感じることなく、自分の人生をデザインしていけるようになるのではないかと考えます。
そういう場合には、できるところまでを繰り返して慣れながら、徐々にできる範囲を広げていく、認知行動療法の考え方が役に立ちそうです。
また、「課題の分離」はできるようになったけれど、それをどう言葉で伝えたらいいのかわからないという場合には、相手を傷つけずに自分の主張を伝えるアサーション・トレーニングの手法を取り入れることも、役に立つのではないかと思います。
おわりに
いかがでしたでしょうか?
今回、この記事を書こうと思ったのは、2015年に開かれた岸見先生の講演会に参加したときのノートに、「嫌われる勇気という言葉だけが独り歩きしている」というメモを残してあったのを見つけたからです。
アドラーは僕の好きな心理学のひとつなので、僕なりに「嫌われる勇気」に対する誤解を解きたいという気持ちが強くなり、記事にしようと決めました。
そこで、記事を書くにあたり『岸見一郎著 / 嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』をもう一度読み直しましたが、それを咀嚼して自分の言葉でブログにアウトプットするというのは、とても難しい作業でした。
そこで、どういう悩みや問題を抱えている人に「嫌われる勇気」が必要なのか、という切り口から書いていけば理解しやすいのではないかと思いつき、なんとか書き終えることはできました。
ただ、そういう切り口から書いたことで、「もしかしたら、岸見先生が伝えたかったこととは違うことを書いてしまったかもしれない」という不安は残りました。それでも、おさえるところはおさえられていると思います。
「嫌われる勇気」は、嫌われる(かもしれない)恐怖にあらがうこと、自分の生き方を貫くためには必要不可欠なものだということがおわかりいただけたなら嬉しいです。
参考文献
この本をモデルにしたドラマもあった、アドラーの名前を世に知らしめた岸見一郎先生によるベストセラー。
アドラー心理学の哲人と、人生を変えたくて相談に訪れた若者の対話形式で書かれているというのが、他の心理学の本にはない新しさがあります。
もし、『嫌われる勇気』の書き方が合わないという人は、こちらをどうぞ。
書かれているアドラー心理学の考え方は同じですが、対話形式ではない、一般的な新書の書き方で書かれていますので、こちらの方が理解しやすいかもしれません。
僕もこちらから先に読みました。
アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために (ベスト新書)
- 作者: 岸見一郎
- 出版社/メーカー: ベストセラーズ
- 発売日: 1999/09/01
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